春秋の檻 獄医立花登手控え(一)の表紙
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時代小説

春秋の檻 獄医立花登手控え(一)

藤沢周平/著
発売日: 2017年04月10日
発行元: 文藝春秋

藤沢周平の代表的時代連作集「立花登」シリーズ全4巻の1巻目。医者になる夢を叶えるべく江戸に出た登を迎えたのは、はやらない町医者の叔父と、口うるさい叔母、驕慢な娘ちえ。居候としてこき使われながらも、叔父の代診や小伝馬町の牢医者の仕事を黙々とこなしている。ある時、島流しの船を待つ囚人に思わぬ頼まれごとをして――。起倒流柔術の妙技とあざやかな推理で、若き青年医師が、獄舎にもちこまれるさまざまな事件を解いていく。『春秋の檻』には、「雨上がり」「善人長屋」「女牢」「返り花」「風の道」「落葉降る」「牢破り」の7篇を収録。解説・末國善己(時代小説評論家)82年に中井貴一主演で連続ドラマ化。そして2016年春に溝端淳平主演で、NHK BSプレミアムにて連続ドラマ化。

担当ライター
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の面白い3つの見どころ

  • 牢医者の役目を担った主人公の活躍物語
  • つい物語に引き込まれてしまう、サスペンスや謎解き要素
  • 重たい展開もあるものの、読後感はどこか爽やか

book 春秋の檻 獄医立花登手控え(一) の書評(感想)

『春秋の檻』は、全四巻ある立花登シリーズの一作目です。

俊才の誉れ高かった叔父に憧れた立花登は、医者となる夢を叶えるべく叔父を追いかけて江戸へ。

しかし彼を待っていたのは、時代遅れの医術で流行らない町医者をやる冴えない叔父、口煩い叔母、二人の娘で町を遊び歩いている驕慢なちえ、という一家でした。

叔父に任された仕事の一つが、牢医者というお役目。

牢医者は、牢に繋がれた囚人たちの病を見てやったり、時には牢問という拷問の立ち合いをします。

そして当然、囚人とは関わり合いを持つ機会も多いわけで……

物語は短編仕立てで、囚人の冤罪を晴らしたり、大きな事件解決への一助となったり、後悔のない最後を送らせてやったりというお話が、

サスペンスや謎解き要素を取り入れつつ語られていきます。

一介の牢医者が、なぜそこまでの活躍を? と思いますよね。

一つには、登の優しい性格が挙げられるでしょう。

相役の矢作幸伯などは囚人の声に耳を傾けていてはきりがないと割り切っているのですが、

若い登はどうしても捨て置けずに気にかけてしまうことがしばしば。

そのせいで人や世間の暗部を見てしまったり、無力感に襲われるようなこともあるのに、

それでも前を向いて歩いていく登の姿には好感が持てます。

また、登は柔術の巧みな使い手でもあります。

厄介事に巻き込まれても、多少のことは力技でなんとかできるところが活躍のポイントでもあるでしょう。

物語によっては重たい展開もあるのですが、最後にはどこか爽やかな風が吹き抜けるような気持ちになれるのは、流石、藤沢周平作品だなと思います。

だらしのない叔父一家については、最初の内は読んでいるとむかむかしていたものですが、

この先は変化があるかもしれないなと思うと、次巻以降が気になるところです。

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