物語の中で描かれるのは、15年前の事件と現在の事件が交錯する中で、母と子、夫婦、家族の関係が少しずつ明らかになっていく姿だ。タイトルの「あの日、君は何をした」という問いかけが、胸に突き刺さるように感じた。
物語の中心にいるのは、息子を亡くした母・水野いづみ。彼女の息子・大樹は、連続殺人事件の容疑者と間違われて事故死する。なぜ彼は深夜に家を抜け出したのか? その謎が15年後の新たな事件とつながっていく展開は、まさに“静かな衝撃”だった。
印象的だったのは、母親たちの愛情が時に狂気に変わるという描写だ。いづみだけでなく、他の登場人物の母親たちも、それぞれの形で子どもを想い、時にその想いが歪んでしまう。読んでいて、「正しい愛情とは何か」「親の想いは必ずしも子どもに届くのか」といった問いが頭をよぎった。
また、刑事・三ツ矢と田所のコンビが、事件の真相に迫っていく過程も読み応えがあった。彼らの冷静な視点が、感情に揺れる登場人物たちとの対比となり、物語に緊張感を与えていた。
この作品は、単なるミステリーではない。人間の心の奥底にある闇や、言葉にできない想い、そして赦しと再生の可能性を描いた物語だと思う。私自身も、家族や大切な人との関係を見つめ直すきっかけになった
『あの日、君はなにをした』は、事件や出来事の真相を探るサスペンス要素の強い一冊です。登場人物たちの心理描写や葛藤が丁寧に描かれ、読者を引き込む展開が続きます。読み進めるほどに真実が少しずつ明らかになり、予想外の結末に驚かされると同時に、人間の複雑な心理や行動の奥深さを考えさせられる内容でした。














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