日本人の作家が書いたことに驚き。
作者名を明かされずに読んだら海外作家だと誤解してた。それくらい異国の雰囲気作りが巧い。
どれも少しずつテイストが違って面白かったが表題作には衝撃を受けた。
花々咲き乱れる美しい庭園、そこに秘められた忌まわしい過去、外界と遮断された病気や障害持ちの少女たち……。
花の名前をお仕着せられ腕に色違いのリボンを結んだ少女たちが、祝福された庭園で戯れる情景が涙がでるほど美しい。
情景描写が非常に秀逸で、豊饒な世界観にどっぷり浸れる。
ミステリー小説というより、少女たちの残酷さやおそろしさ、儚さや愛らしさ、哀しみにフォーカスした幻想小説の趣。
ごくほんのりとだが同性愛(に限りなく近い女性同士の友情)要素も含むので、その手の話が好きな人にもおすすめ。奇跡的なバランスで成立する箱庭のような子供時代を描いた、寄宿舎ものとしても出色。
皆川博子の海外ものが好きならハマる。
表題作は誰が被害者で加害者と、一面的に断罪できないのがなんともやりきれない。
狂気に侵された人間も元は善人で、崇高な理想や目的、なにより最愛の人を守りたいが為に行動したのだと思うと、強すぎる責任感故の悲劇だったのかもしれない。
生き残った少女たちの決断は非情に思えるが、それこそ少女性の秘めたる二面性、無垢な愛らしさと表裏一体の無邪気な残酷さを体現してぞわっとした。
真相を知ったあとで読むと、滅んだ庭と犠牲者の復讐を代行する老後の彼女たちがやるせない……。
ラストから数行目ではうるっときてしまった。
そんな傑作短編。
本作は、少女にまつわる謎を集めた中短編集です。
収められている5つの物語は、時代、場所、現実世界にファンタジー世界と、それぞれで舞台が異なります。
共通しているのは、少女が関わってくるということだけ。
清らかな存在でもあり、無慈悲な存在でもあり。
人生の一定期間のみ少女として存在できる彼女たちの物語は、ある部分では美しく、そしてある部分では残酷です。
全体の雰囲気としてはダーク寄りです。
表題作の『オーブランの少女』は、美しい庭園を管理する老齢の女性が殺されたところからスタートします。
作家である主人公は彼女の日記を手にし、その過去を組み立て直していくのです。
彼女がまだ若かった頃の悲劇。
少女たちが集められた美しい庭園という情景が一転する様も、ある意味では美しいと言えるかもしれません。
私の印象に残っているのは、『氷の皇国』というファンタジー世界の物語です。
本作の中でも1、2を争うレベルのダークさだったと思いますが、
氷の皇国や城内についての描写が美しいので好きです。
他に、『大雨とトマト』という現代日本を舞台にした物語もありますよ。
少女というワードにピンと来る方や、ファンタジー世界のミステリーを読みたい方、
とにかくダークな雰囲気が好き! という方などにおすすめの作品です。



















