本作は、少女にまつわる謎を集めた中短編集です。
収められている5つの物語は、時代、場所、現実世界にファンタジー世界と、それぞれで舞台が異なります。
共通しているのは、少女が関わってくるということだけ。
清らかな存在でもあり、無慈悲な存在でもあり。
人生の一定期間のみ少女として存在できる彼女たちの物語は、ある部分では美しく、そしてある部分では残酷です。
全体の雰囲気としてはダーク寄りです。
表題作の『オーブランの少女』は、美しい庭園を管理する老齢の女性が殺されたところからスタートします。
作家である主人公は彼女の日記を手にし、その過去を組み立て直していくのです。
彼女がまだ若かった頃の悲劇。
少女たちが集められた美しい庭園という情景が一転する様も、ある意味では美しいと言えるかもしれません。
私の印象に残っているのは、『氷の皇国』というファンタジー世界の物語です。
本作の中でも1、2を争うレベルのダークさだったと思いますが、
氷の皇国や城内についての描写が美しいので好きです。
他に、『大雨とトマト』という現代日本を舞台にした物語もありますよ。
少女というワードにピンと来る方や、ファンタジー世界のミステリーを読みたい方、
とにかくダークな雰囲気が好き! という方などにおすすめの作品です。