タイトルから感じる切なさが物語全体にじんわりと広がっている作品でした。主人公の視点を通して、日常の中に潜む孤独や希望のなさが静かに描かれていて、誰かに届かない想いや言葉のもどかしさが胸に響きます。登場人物たちの心の距離感や、すれ違いながらも続く関係性がリアルで、まるで自分の身近な誰かを見ているような気持ちになりました。都会の無機質さと個人の内面の繊細さが対比されていて、読み終えた後にぽつんと残る余韻がとても印象的です。静かなけれど深い感情が詰まった一冊でした。
東京に来なかったほうが幸せだった?
Twitterで凄まじい反響を呼んだ、虚無と諦念のショートストーリー集。
「3年4組のみんな、高校卒業おめでとう。最後に先生から話をします。大型チェーン店と閉塞感のほかに何もない国道沿いのこの街を捨てて東京に出て、早稲田大学の教育学部からメーカーに入って、僻地の工場勤務でうつになって、かつて唾を吐きかけたこの街に逃げるように戻ってきた先生の、あまりに惨めな人生の話をします。」(「3年4組のみんなへ」より)
「『30までお互い独身だったら結婚しよw』。三田のさくら水産での何てことのない飲み会で彼が言ったその言葉は、勢いで入れたタトゥーみたいに、恥ずかしいことに今でも私の心にへばりついています。今日は、彼と、彼の奥さんと、二人の3歳の娘の新居である流山おおたかの森に向かっています。」(「30まで独身だったら結婚しよ」より)
「私、カッパ見たことあるんですよ。それも二回。本当ですよ。桃を持って橋を渡ると出るんです。地元で一回、あと麻布十番で。本当ですよ。川面から、顔をニュッと目のところまで突き出して、その目で、東京にしがみつくために嘘をつき、人を騙す私を、何も言わず、でも責めるようにじっと見るんですよ。」(「カッパを見たことがあるんです」より)
14万イイネに達したツイートの改題「3年4組のみんなへ」をはじめ、書き下ろしを含む22の「Twitter文学」を収録。
【推薦コメント】
面白すぎて嫉妬した。俺には絶対に書けない。
ーー新庄耕さん(小説家。Netflixシリーズ「地面師たち」原作者)
【著者略歴】
麻布競馬場 (あざぶけいばじょう)
1991年生まれ。慶應義塾大学卒。2021年からTwitter に投稿していた小説が「タワマン文学」として話題になる。22年、ショートストーリー集『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』でデビュー。
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