寡聞にして吉上亮という作家を知らなかった。
サイコパスノベライズで初めて氏の作品に触れたのだが、これが本当に素晴らしい。
既にヒットしたビッグネームのノベライズというと、どうしてもその人気に頼って文章などもろもろお粗末になりがちなのだが、これは本当に文章力と構成力が高くてびっくり。
文体自体に魅力があって、槙島の登場シーンに顕著だが、特にキャラクター描写が秀逸。各キャラのファンなら納得するのではなかろうか。
そしてその安定した筆力が支える世界観もまた素晴らしい。
扱う事件もまたシビュラ管理社会が抱える歪みや欺瞞をよく描き出している。
本編では語られなかったグソンが主人公としてインスパイアされてるのは嬉しい。彼が好きな人は読んで損ない。残虐シーンが苦手なら正直勧められないが、アニメ本編を見てるなら耐性あるはずだ。
ただ矛盾点もあり、グソンや下巻にでてくるリナの性格が本編とやや食い違ってるように見受けられる。
特にリナは、六合塚との決別時に「思ってたのと違うな」とひとりごちた軽さからは想像できない悪女にして聖女に進化していて、作中の経緯を辿ってもはたしてこんなにキャラが変わるか……?と疑問符が付く。
おそらく作者の好みの入ったアレンジだろうが、それを補ってあまりある魅力を評価したい。
個人的にはグソンが一介のハッカーから本編でのシビュラの裏をかく凄腕クラッカーになるまでの経緯が知りたかったのだが、その部分は省かれて残念。
妹を疑似空間で満足させるために、そのあたりのスキルや知識を磨いたのかな……と仕方ないので自己完結。
槙島の登場は後半になるが、カリスマ性は健在。文章で描写されることでさらにミステリアスな魅力が増すので、ファンにはぜひ読んでほしい。













