病で死にゆく息子の側で、父親の拓実は自分が若かりし頃のことを想い出す。自分は昔、息子に会っていたかもしれない、と。終盤に涙腺崩壊しました。ラスト1行を読んだあとの、すーっとした感覚が何回読んでも気持ちいい。
若き日の主人公・宮本拓実 が、未来から来た少年トキオ と出会い、過去の過ちや挫折と向き合うことで少しずつ成長していく姿、その変化が、読んでいて胸にじんわり刺さります。 
また、物語のラストで過去と現在のつながりが見えてきたとき、「時間」や「人生」「生きる意味」についてふと考えさせられ、「未来は明日だけじゃない。心の中にもあるんだ」という言葉が胸に残りました。  
時生はただの推理やサスペンスではなく、人間ドラマ、家族の物語、時間と人生の再考を含んだ、優しくて切ないヒューマンミステリー。温かさと切なさが同居する物語を味わいたい方には、特に刺さる作品だと思います。
過去に飛んだ時生が出会うのは、尊敬できる父ではなく、逃げてばかりの若者としての拓実で、その組み合わせが一番切なかったです。本当なら幻滅して終わってもおかしくないのに、そこで育っていくものが憎めなくて、何度も目頭が熱くなりました。
印象的だったのは、「明日だけが未来じゃないんだ」というメッセージです。一瞬でも生きている実感があればいいという言葉は、きれい事ではなく、死を間近にした家族だからこその重みを持って響いてきました。













