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【このまま眠ってしまえばいいのだろうか。そうしたら、薬を飲まされ、ICチップを埋め込まれ、催眠術をかけられて、明日の朝にわたしは変わっているのだろうか…】
宗教二世の葛藤と苦悩の物語。“カルト宗教”という非常にセンシティブな題材の作品だからこそ、興味深く、ひたすら見入ってしまった。“宗教”という難しいテーマに対し、それを肯定するでもなく、否定するでもなく、この小説をどう捉えるかはすべて読む者の想像力と価値観に委ねられているような、そんな余白の多い作品だった。宗教にのめり込む理由は人それぞれだと思うし、おそらく多くの場合は救済を求めて宗教にすがったのだと想像するのだけれど、信じたことでかえって社会から隔てられ、結果的に生きづらくなることが多いのだという現実を本作で突き付けられて、なんだか胸が締め付けられるような非常に苦しくなる内容だった。