『刀剣幻想曲』は、刀剣とそれにまつわる人の物語を描きだす短編集です。
昨今の刀剣ブームで刀剣に関する書籍が多く出版されていますが、
刀剣と人との関わり合い、という視点の小説は見たことがなかったので、とても楽しく読めました。
幻想曲というタイトルの通り、収録された九つの短編全てにどこか幻のような雰囲気があります。
というのも、刀剣の来歴ははっきりとわかっていないものが多いから。
例えば三の箱の「山鳥毛×上杉景勝」は、山鳥毛という刀にある刃毀れの謎を景勝が追いかけるストーリーです。
物語にはもちろんその謎の答えが用意されているのですが、それが真実なのかどうかは実際の史料を紐解いてもわからないままなのです。
そういう意味で、もしかするとこの刀剣にはそういう過去があったのかもしれないし、そうではないのかもしれない…
そんなことを考えていると、まるで幻を見極めようとしているかのような気分になってしまうことも。
もちろん全てが曖昧なわけではないので、刀剣に関する理解がより深まるのは間違いありません!
刀剣に興味のある方はもちろん、歴史小説好きの方にも、
新鮮な視点から切り込んでいる物語でテイストも様々なのでおすすめですよ。
ちなみに短編なので興味のある刀剣の物語から読んでも問題ないのですが、
時代順に並んでいるので、こだわりがなければ一の箱から読んでみてくださいね。