日本ファンタジーノベル大賞優秀賞である本作。
時代物だからと敬遠しているなんて、もったいないほどおもしろいんです!
お江戸通町の大店・廻船問屋長崎屋の若だんなこと一太郎は、知らぬ者がいないほどの病弱です。
そんな彼の看病や身の回りの世話を引き受けているのは、若だんなにとって兄代わりともいえる二人の手代。
けれどこの二人の正体は強力な妖怪で、他にも若だんなの身の回りには個性豊かな妖怪たちがたくさん住み着いているのです!
病弱だけれど頭の冴えた若だんなと、一も二もなく若だんな優先の二人の手代たちが、江戸の町で巻き起こった猟奇殺人事件に挑んでいきます。
そんな彼らの協力者が、個性あふれるたくさんの妖怪たち!
長崎屋に住み着く小鬼の鳴家、派手な着物の屏風のぞきをはじめ、姿かたちも様々な人ならぬ者たちの助けによってたどり着いた事件の真相とは……?
柔らかな文体で生き生きと描写される江戸の街並みや、人々の生活の様子は、江戸時代に詳しくなくてもすんなりと入り込めてしまいます。
それからこの作品、登場するお菓子や料理がとにかくおいしそう!
ぜひ、若だんなの友人で菓子屋の跡取り・栄吉の持参するお菓子のくだりを読みながら、熱いお茶とお饅頭を味わってみてはいかがでしょうか。