序盤から整の重く暗い過去が暗示されており、虐待の話は避けて通れないだろうと思っていたのでその意味での驚きはなかった。
救われた人間が必ずしも幸せになるとは限らない。
救われたことで恩人に感謝するとも限らない。
救いがないと言えばそうなのだが、私はそれでいいと思った。
実際救われていない人や事が現実にたくさんあり、救われなかった事件や被害者が存在するのに、「かくかくしかじかで可哀想な子どもたちは救われてみんなしあわせになりました、めでたしめでたし」とレトリックされても鼻白む。
フィクションといえど安易な救済やスッキリしたハッピーエンドを設けないのが整やこの物語の誠実さであり、人の数だけ価値観を許容しようとする深みだ。
普段は比較的明解な考察をする整が、終盤で陸に告げる「今はこれしか言えない、ごめんなさい」がずっしり響く。
整の学部やめざす職業には大いに納得。なるほど、それでか!と今までの理屈っぽい言動に納得がいく。
周囲に気持ち悪いヤツと言われても社会が内包する疑問や違和感、理不尽を蔑ろに流さず、「何故だろう」と考え続ける愚直な姿勢こそ彼なりの誠意であり、職業倫理に繋がるのかなと妄想を逞しくした。
ライカは二重人格なのかな……とか、恩師がラスボスだったりするのかな……と、今後の展開への布石も楽しみ。











