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ブクスタ！

幽霊が見たくて悪戦苦闘する女性作家のほんのり不気味エッセイ

父が連れ帰ったお玉（調理器具）の霊が謎

生猫の代わりにイマジナリー猫を飼い始め、野良猫を「死んだらうちにきぃひん？」と勧誘する作者の狂気が一番怖い

お陰で幽霊は瞬きしないという知見を得た

『私は幽霊を見ない』は、“生と死”“記憶と忘却”というテーマを静かに問いかける小説です。

主人公は「幽霊を見ない」と言いながらも、人が残していく存在感や、自分の中に刻まれ続ける他者の影に否応なく触れていきます。

幽霊が「見える / 見えない」の話ではなく、「すでにいない人の存在をどう受け止めるか」を扱っている点が印象的でした。

作中に漂う空気は淡々としているのに、言葉はときどき鋭く胸に入り込みます。

“はっきり形はないのに、確かにそこにあるもの”に気づいた瞬間、心が少しだけ揺れる。

物語を読み終えると、何気ない日常に潜む「痕跡」を自分も感じ取れるようになる気がしました。

人と人とのつながりは、消えたように見えても、本当には消えない。

そのことを、押しつけがましくなく、静かな語りで伝えてくれる作品です。