kindleで試し読みして続きが気になったので購入。
個人的には「ぼぎわん」より好みだった。リングといい残穢といい呪いが拡散していく系は一定の人気があるが、そりゃ他人事だと悠長に構えてる所にお前も死ぬぞって言われたら怖いわなと思わなくもない。
私は実話・実録を除くホラーを、他のジャンルよりフィクションとしての完成度が数段要求されるジャンルだと思っているので、読者を当事者に引きずり落とすのは一種の禁じ手であり、グレイゾーンギリギリの反則。
展開の是非を問うのではなく、そんなの誰だって怖いじゃん!て安直な帰結の印象。
「ぼぎわん」でも感じたが、フェミニズムの主張が強い。
無理解で独り善がりな旦那のモラハラパワハラDVに苦しむ妻子と、「ぼぎわん」でも見たエピソードが引用されるのだが、続けてだと正直食傷する。旦那のいやらしさやクズさは存分に描けているのだが……(「ぼぎわん」のパパ友や名刺ポエムにはうへぇ……となった)
くりかえすが、私はホラーをフィクションとしての完成度が要求されるジャンルだと思ってる。
なのでキャラクターの性格付けの範囲を超えて、独善的な旦那、女性を蔑視する周囲や結婚出産育児を奨励する社会への批判など、作者の価値観が行間に透けて見えるのは萎える。
真琴や野崎には然程感じないのだが、この巻の里穂の一人称視点など、キャラクターが作者のスピーカーになってる。
作者の声を上手くフィクションに落とし込めれば別だが、技巧的に昇華されてないので違和感が強い。
このシリーズや作者の色だと思えばそれまでだが、好き嫌いは分かれる。
そして前作と同じ「信用できない語り手」ものであるため、主観パートでは可哀想な被害者でも、「額面通り受け取っちゃいけないんだな」「善人ぶってるけど中身はクズなんだろうな」とある程度予想が付き、その後の展開にも心構えができるため、目新しさや衝撃はどんどん薄れていく。
もし今後もこのパターンが続くなら飽きるのでもう少し工夫が欲しいところ。
欠点ばかり挙げ連ねてしまったが、皮肉屋だが根は真面目な野崎や情に厚く子供に弱い真琴はじめキャラクターは魅力的だし、終盤のどんでん返しは楽しかった。元凶が報いを受ける結末にも多少留飲はさがった。
小さい子供や何の罪もない他人が巻き込まれているので完全にスッキリとはいかないが、制裁を加えた本人は呪いがどこから来るかなど知る由もなかったのだと納得はしている。あるいはそれすら覚悟の上で復讐に臨んだのか……。
真琴たちに感情移入してる読者にしたらベターエンドだが、小さい子供を含む百人以上の犠牲が出てるので相対的客観的にはバッドエンド。
真琴自身も首を突っ込んだだけで活躍らしい活躍はしてないのだが、まあそんな話があってもいいか……。
どちらかというと霊能力も何もない、ただの人の強さや怖さが際立っている。
「ぼぎわん」で琴子が真琴をさして「最後の家族」と言っていたが、今回登場した美晴の、二人とは違うさばさばしたキャラクターもお気に入り。番外編で再登場してくれたら嬉しい。この先シリーズが続けば、他の比嘉姉妹(兄弟)にもお目にかかれるのだろうか。期待したい。











