好きなシリーズの最新作。
因縁がらみの建物を移す曳き家の仙龍と春奈が活躍する。
「主人公が嫌い」って意見もあるが、私には理解できない。フツウにまっすぐで好感のもてる主人公だと思うのだが考えすぎでは……?
読書なんて感じ方は人それぞれだし、キャラの好みも千差万別でいいとは思うが、私は春奈に好感を持っている。
今作では重役の浮気に本気で怒る所や自然におばあちゃんの手を握る所(+「わんこ」発言)、過去に遡れば一作目の赤子に関係する哀しい真相に感情を乱すところなど、勝ち気で強気、仕事以外では不器用でやや融通が利かないが、そんな青臭いところも含めて応援したくなる。
仙龍との微妙な距離感や恋愛面でのもどかしすぎる進展ぶり、小林教授やコーイチ、和尚など魅力的な周囲の人物との掛け合いも楽しい。
いちいち登場人物にイライラしながら読むのも不毛だし(どこで切るかは自由)、キャラクターに愛着持ってシリーズを追っかける方がストレスフリーでずっと楽しい。
今回は地滑りで発見された人柱の遺骨と樹齢八百年の枝垂れ桜にまつわる悲恋。
終盤であきらかになる真相はあっさりめだが、それまでの過程が面白い。ホラー描写もさほどグロくはないが、そこに絡む人間関係がテンポよく描写される。
一人称「僕」のおっとり穏やかな小林教授やわんこ属性のムードメーカー・コーイチなど、脇を固めるキャラの朗らかさが恐怖を中和してくれるので、キャラクター小説としても安定の読み応え。仙龍は相変わらず寡黙男前カッコイイ。
特にラストの桜が咲く場面は映像的に美しく胸に迫る。
祟られた人たちは災難だったけど、数百年地すべりから集落を守り続けてきた実績を加味すれば……でも偶然掘り出しただけで祟られるのは気の毒だなあ……。











