この作品は滅んだ世界が大きな話の軸であり、主人公へのフォーカスよりもボロボロの機械の体で映画を見続けている男や主人の死を理解できていないメイドロボット、子供の死体の山、暴走するAI、生存者の老人などの世界の痕跡に主軸を置いています。
これらの痕跡が存在する場所が圧倒的退廃の画力で描かれており、AIやロボットの行動全てがどこまで行っても痕跡でしかないことを感じさせものです。また、パーツ一つ一つは可愛く見える主人公は全体的な印象として世界と同様の暗いものであり、リアリティの高い風景にも関わらず空間によく馴染んでいるのが特徴的。
しかし、主人公は生存者の存在や自身の役目である除染作業に希望を持っており、痕跡との遭遇は暗いものだけを感じさせるものではない。彼女(とペットの謎生物)が唯一の進行形の存在として描かれており、主軸である痕跡を見て感じる全てが主人公の掘り下げとなっている。
続きが気になるというよりも、滅んだ世界でありながら広すぎる世界を見ていく主人公の途方のなさから逆に嫌でも続いていくのだろうと思わせる作品であった。