十字型の屋敷という舞台設定だけでもう勝ちなのに、そこに「ピエロ人形の視点」を差し込んでくるのがずるいです。動けないはずの人形の目線で事件を見せられると、自分もその場から逃げられない感じがして、密室感と気味悪さがじわじわ増していきました。
竹宮一族の、人としてどこかねじれてしまった感じも印象的で、水穂と人形師・悟浄がその異様さの層を一枚ずつ剝がしていく過程には、古典的な探偵小説の心地よさがあります。会話を追っているだけで、十字屋敷の空気がどんどん濃くなっていく感覚がありました。
「普通じゃないのよ。この家は」
累計60万部突破の一冊完結
東野圭吾ミステリー満点の館へようこそ
☆☆☆
「普通じゃないのよ、この家は」
十字屋敷の主人・頼子がバルコニーから転落死して四十九日。
一族が法要に集った夜、次の主と秘書が刺殺された。
外部犯か、あるいは一族の犯行か。
すべてを見ていた一体のピエロ人形は、
あなたに語りかけてくるーー。
東野圭吾が仕掛ける精緻にしてフェアな謎解きミステリー。
十字型の屋敷という舞台設定だけでもう勝ちなのに、そこに「ピエロ人形の視点」を差し込んでくるのがずるいです。動けないはずの人形の目線で事件を見せられると、自分もその場から逃げられない感じがして、密室感と気味悪さがじわじわ増していきました。
竹宮一族の、人としてどこかねじれてしまった感じも印象的で、水穂と人形師・悟浄がその異様さの層を一枚ずつ剝がしていく過程には、古典的な探偵小説の心地よさがあります。会話を追っているだけで、十字屋敷の空気がどんどん濃くなっていく感覚がありました。