オタクで居ること、誰かを推すことが昔ほど珍しくなくなった現代を描いている本。
自分ではない別の誰かを推すことは、自分のコンプレックスに関係があるのかなと思いました。
自分が欲しいけれど持っていないものを持っているから惹かれ、その人を知り、その人に近付こうとする。
不祥事を起こせば自分の理想の人と遠のくから叩く。
それでもやはりその人が大好きだから、新しい作品が出たら応援して、CDを買ったりするのだと思います。
文字にしてみると人を推すことはとても自分勝手の様に見えますが、推すことで自分の存在価値を見い出せたり、生きていることを実感できるのだと思いました。
作品の描写がとてもリアルで、文字を読んでいるのにその場面を第三者として遠くから見ているようでした。
また、推しにはキラキラしたままで居て欲しいという気持ちを知らぬ間に押し付けてしまうものですが、
アイドルだって人に対して怒りの感情が湧いたり、結婚したり1人の同じ人間なのだともう一度認識し直すことが大切だと思いました。
それに加えて、生々しい人間の生き方も描いているように感じました。
推しのためにバイトをしてCDをたくさん買ってLIVEに行きグッズを買う。
もっとちゃんとしなさいと主人公の親は言いますが、生きがいがあってそのために毎日一生懸命生きている。
生きがいが違うだけでほとんどの人がそういう生活をして今を楽しんでいるように思います。
「推しは推せるうちに推せ」と言いますが、本当にその通りだとこの本を読んで思いました。
共感できる部分が多いので推しが居る人にこそ、読んでいただきたい作品です。