高齢化社会の闇を題材としています。
要介護高齢者の大量殺人事件が起き、犯人には死刑判決が下りました。
犯人は自分自身も父親の介護で地獄のような日々を送り、父親の死によって救われました。
犯人は在宅介護業務に従事し身内の介護に苦労する家族の姿を見てきました。
その家族の代わりに要介護高齢者を殺害するロス・トケアを実行していました。
家族を救い、高齢者本人の尊厳を守り、日本社会に問題提起したロスト・ケアは犯人が死刑になることで完結するケアです。
死刑という衝撃的な結末が国民の記憶に残り、日本の福祉制度の改革を後押しする大きな力になります。
このような高齢者の格差が起こらないように介護保険制度を利用しやすくし、サービスを充実させる必要があります。
ホームヘルパーなどの介護保険サービスを利用しても家族の負担はそれほど軽減されていないのが現実です。
親の介護で仕事ができなくなり生活苦から生活保護制度を頼っても「若いから働ける」と言われてしまうとそれ以上何も言えなくなります。
いつまで続くかわからない介護は、小説の中で表現されている通り〝地獄”なのかもしれません。
介護は家庭の問題ではなく高齢化社会の日本の問題であると小説を読んで改めて考えさせられました。