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ブクスタ！

『悪の教典　上』（貴志祐介）は、学園を舞台にした戦慄のサイコサスペンス小説です。人気教師・蓮実聖司の完璧な外面の裏に潜む冷酷な本性が、徐々に明らかになっていく過程が巧妙に描かれています。貴志祐介特有の緻密な心理描写とリアリティのある人物造形により、日常が少しずつ狂気へと崩れていく恐怖を体感できます。人間の善悪の境界を問う重厚なテーマと、息をのむ展開が印象的な傑作です。

この作品の恐ろしさは、まず､表向きは生徒や同僚から慕われる優秀な教師が、裏では共感性を欠いた狂気のサイコパスであるというギャップにあります。 

読んでいるうちに、この人、本当に教師？とゾッとするほど裏表のある主人公の正体が、徐々にあぶり出されていく展開に引き込まれ、一気読みしてしまいました。

単なるホラー・ミステリーを超えて、人間の闇､社会の仮面､善と悪の境界を鋭く問いかける作品として、読んだ後もしばらく心に残る、そんな、重くも考えさせられる一冊だと思います。