ページを開いた瞬間からずっと薄暗い部屋に閉じ込められているような読書体験でした。一軒の家の中で少しずつ過去が暴かれていく構成が、派手さはないのに妙に息苦しくて、読み進めるほど肩に力が入っていきました。
いちばん怖かったのは、血や幽霊ではなく、自分が何者なのかという足場が静かに崩れていく感覚です。忘れていた記憶が戻ることが必ずしも救いではなく、むしろアイデンティティを揺さぶる凶器として立ち上がってくるところに、心理ホラーのような冷たさを覚えました。
そこに、親子関係や幼児虐待、家族という名のもとに起きた暴力が絡んでくるので、単なるトリック解きでは終わりません。誰かを守るためについた嘘が、別の誰かの人生を奪ってしまう構図が、本当にやりきれなかったです。


















