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この作品は、“ラノベ業界モノ”というジャンルの皮をかぶった、完全にぶっ飛んだ異世界ギャグファンタジー。講談社ラノベ文庫を舞台に、ドラゴン、ゴーレム、猫耳美少女編集者、そして実名ネタまで飛び交う、作者・榊一郎さんの“暴走と自虐”が詰まった一冊です。主人公・久能拓哉が講談社を訪れると、そこは地下迷宮。編集者は対物ライフルを構え、作家はドラゴン化し、入館証はゴーレムが発行する――この設定だけで笑ってしまうのに、物語は意外と“業界あるある”を真面目に語ってくる。このギャップがクセになります。「一発書きのためにアルバイトにプロットを語って筆記させる」など、創作の裏技がギャグの中に混ざって登場。売れる作品と書きたい作品の違い、編集との関係性、執筆速度の工夫など、美少女文庫で活躍する“さかきいちろう”の正体が明かされるなど、作者自身をネタにした展開も満載。実在の編集者や作家の名前が“偶然”一致するキャラが登場するなど、内輪ネタも多いですが、それを笑いに昇華する筆力が見事です。講談社が魔窟であるという設定は、業界への愛と諦念が混ざった“皮肉のファンタジー”。それでも、主人公が自分の作品を届けようと奮闘する姿には、創作への情熱が感じられます。ふざけているのに、時々真面目――それがこの作品の魅力です。この作品は、ラノベ業界を“異世界”として描くことで、創作の苦悩と喜びを笑いに変えてくれる一冊。












