原田マハさんを初めてちゃんと読みました。
同棲に絶賛片想い中のオネエで乙女な美術大生・美智之輔が、留学したパリでスランプ中の作家に出会って……という話。
ラブコメに見せかけた成長小説にして青春小説。
美智之輔のテンション高い一人称が楽しい。
冒頭からテンポよくコミカルな展開。地の文は乙女全開なのだが、対外的には普通の男子を擬態しているので、そのギャップがまた笑わせる。
出てくるキャラみんな濃くて個性的なので、漫画の原作にしたらウケそうだと思った(連続ドラマや映画とも相性よさげ)。
美智之輔のままならぬ片想いに一喜一憂して応援したくなるのはもちろんのこと、光晴の苦悩と葛藤には手に汗握る。
クリエイターならだれしも共感できる創作への情熱やインスピレーションの有無、そしてそれを維持し続ける困難が語られて身にしみる。
ジェンダーやアーティストの挫折など深刻な内容を含みながら、全編軽やかで明るく読後感は爽快。
美智之輔や光晴を見ていると男女の友情は成立するか否かなんて命題どうでもよくなる。
終盤で美智之輔がある人に向けた「好き」は、それまでの言動からするとやや唐突な気もしたが、「LOVE」ではなく「LIKE」+「RRESPECT」として解釈した。
同志、同胞、それら全部ひっくるめた魂の友、そんな感じ。
リトグラフに興味あるひともないひとも、クリエイターとして普遍的な悩み、そして一人の青年の軽やかな成長が綴られているので、最後まで一気に読める。












