珈琲豆の可愛らしい表紙に惹かれて手にとりました。
でも、本をひらいてすぐに「深瀬和久は人殺しだ」という衝撃的な文字が目に飛び込みます。もう驚きのあまり開いた口が塞がりません。
一体どんな話が待ち受けているのだろうと、ハラハラしながらページをめくっていきました。
驚愕な言葉から一転。物語の初めは主人公・深瀬のありふれた日常を描いています。深瀬は、なんの変哲もない毎日を繰り返す…言ってしまえば、地味で物静かな会社員です。
しかし珈琲専門のカフェとの出会いで、すこしずつ変わっていきます。
珈琲には『南国の花、ピーチの味』や『ブルーベリーとチョコレートの風味』といった珈琲らしからぬ説明がしてあるのですが、それを飲んだ深瀬の具体的な感想がとても良いです。味を想像して珈琲が飲みたくなりました。
深瀬が常連になったころ、昔の自分のようにカフェの珈琲の虜になる美穂子と出会います。
美穂子の雰囲気に惹かれた深瀬は、マスターの奥さんに助けられながら恋を実らせます。寡黙な深瀬と感情豊かな美穂子。
ふたりはお似合いだなと思っていた矢先、冒頭の手紙が美穂子のもとに届きます。
深瀬は思い当たる事件のあらましを美穂子に語りはじめます。それは事件の発端となった、ひと夏の思い出について…事件の一端を担ぐことにはなったものの直接の原因を作ったわけではないと俯瞰し、彼女に秘密が伝わってしまった自分の境遇を呪う深瀬。
この手紙を差し出した人物はいったい誰なのか。なぜ今になって、何の目的で……
謎が謎を呼ぶ不朽のミステリー作品です。是非一度ご覧ください!