現在も多くの愛読者を持つ夏目漱石は「人生の真相の半ばは夢の中に隠されている」と述べ、作品の中で夢を活用した。「夢十夜」は一連の夢で語られる魂の喪失と回復の物語であるが、例えば第8夜の黒繻子の女や第10夜の謎の女の正体は何か、受け継がれてゆくパナマ帽は何を意味するのか、など多くの謎がある。「三四郎」の広田先生の夢は何を意味するのか。「こころ」で二人の女性だけが名前を持つのはなぜか。本書はユング心理学の視点から、日記や書簡を含めた漱石の作品全体に張り巡らされた象徴とイメージの連環を解明し、読者とともにこれらの謎を読み解く試みである。その試みを通じて、漱石の生涯をかけた闘いの軌跡が明らかになる。それは無意識と対決し、傷ついた瀕死の魂を救う苦闘の物語である。彼は過酷な運命を文学によって克服したのであった。自伝的作品「硝子戸の中」「道草」、随筆「点頭録」等は彼が最後に到達した境地を示している。
はじめに
第一章 漱石と夢とインテグリティ
第二章 初期作品を読む
第三章 「夢十夜」 -漱石の個人的神話
第四章 「三四郎」と広田先生の夢
第五章 「それから」 -無意識の偽善
第六章 「門」と崖の下
第七章 「彼岸過迄」とマニアの復活
第八章 「行人」と大いなる眠り
第九章 「こころ」と変容
第十章 「硝子戸の中」と漱石の母親像
第十一章 「道草」と救済
第十二章 「点頭録」と肯定
第十三章 「明暗」と新境地
第十四章 漱石と「夢十夜」
あとがき
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