山での仕事を舞台に主人公が多くの経験を積んでいきます。仕事を教わりながら、師匠たちの生き方にも大きな影響を受けます。ラジオドラマや映画にもなった今作。なんでも便利になった今の時代に、新しい考え方を学べると思います。
タイトルに惹かれて購入した作品でした。
『神去』とは舞台となる村の名前で、『なあなあ』とは“ゆっくりいこう”“まあ落ち着け”というニュアンスを含む村人の口癖。
これだけ見ると、のほほんとした雰囲気を感じますが、主人公はのんびりとしていられません。
平野勇気は、神奈川県の高校を卒業したばかり。
卒業後の進路をなにも考えていなかったため、担任教師の計らいで半ば強制的に神去村の中村林業株式会社へ就職することになります。
馴染みもなければ、望んだわけでもない山仕事。
初めは村からの脱走を目論むも、慣れるにつれて村から離れがたくなっていき…?
四季を直に感じとれる村で林業の世界を垣間見られるーーこの作品の面白いポイントのひとつです。
そして、山仕事をする時のチームメンバーも魅力的。
たとえ第一印象が悪くても、だんだんと好きになってしまうキャラクターたちです。
ひと言でまとめると、主人公が林業を通じて成長していく物語ですが、要所要所に笑える場面がしっかりと用意されていて、エンタメ小説としてもレベルの高い作品だと思います。
作品の山場、神去村で行われる神事の展開には主人公同様、きっと驚かれることでしょう。
その詳細を知りたい方はぜひ、実際に手に取って読んでみてください!
神去なあなあ日常』を読んで、私は「人は環境によって育てられる」という言葉の意味を深く考えさせられた。主人公・平野勇気は、進路も決めずに高校を卒業したばかりの青年。突然、三重県の山奥・神去村に送り込まれ、林業の世界に飛び込むことになる。最初は戸惑いながらも、村の人々との関わりや自然の厳しさ・美しさに触れる中で、彼は少しずつ変わっていく。
印象的だったのは、村人たちの「なあなあ」な態度だ。都会では曖昧さは非効率とされがちだが、神去村では「なあなあ」が人間関係の潤滑油となっている。急がず、無理せず、でも確実に前に進むその姿勢は、現代社会のせわしなさに疲れた私たちに、心の余白を思い出させてくれる。
また、林業という仕事の奥深さにも驚かされた。木を伐るだけでなく、何十年も先を見据えて森を育てるという視点は、即効性ばかりを求める現代の価値観とは対照的だ。自然と共に生きることの尊さ、そして人間の営みの一部としての仕事の意味を、勇気の成長を通して感じることができた。
この作品は、ただの田舎体験記ではない。人と人との関係性、自然との向き合い方、そして自分自身との対話を描いた、静かで力強い成長物語だ。読後、私も「なあなあ」でいいんだと思えた。焦らず、でも確かに歩むことの大切さを、神去村の人々が教えてくれたように感じる。



















