『おいしいベランダ。 あの家に行くまでの9ヶ月』は、ベランダ菜園を通じて育まれる人間模様と、そこから生まれる温かい食卓を描いた物語です。
主人公の栗坂まもりは、ひょんなことから隣人の亜潟葉二とベランダ菜園を始めることになります。
最初は戸惑いながらも、植物を育てる喜び、収穫した野菜を料理する楽しさを知り、次第にベランダ菜園に魅了されていきます。
本書の魅力は、何気ない日常の中に散りばめられた小さな幸せを丁寧に描いている点です。
ベランダで野菜を育てること、その野菜を使って料理をすること、そしてそれを誰かと分かち合うこと。その一つ一つが、読者の心を温かく満たしてくれます。
また、登場人物たちの個性豊かなキャラクターも魅力的です。
不器用ながらも優しい葉二、明るく前向きなまもり、そして二人を取り巻く人々。
彼らの織りなす人間関係は、時に笑いを誘い、時に胸を熱くさせます。
本書は、日々の忙しさに追われる中で忘れがちな、ささやかな幸せに気づかせてくれる作品です。
読後には、ベランダで何か育ててみたくなる、そんな気持ちにさせてくれる一冊です。