「鹿の王」で本屋大賞を取り一躍有名になられた上橋菜穂子さんの作品ということで、読む前から期待値は高めでした。
タイトルが「精霊の守り人」なので精霊のご加護を受けるような話なのかと思って、読み進めていたら精霊とは水妖のことで序盤から想像を裏切られました。
そしてあろうことか帝から命を狙われる展開になり、思い描いていたストーリーとのギャップに少したじろぎました。
でも、情景が浮かぶ洗練された文章に気づいた時にはキャラクターの息を感じ、その世界の空気を肌で感じていました。
文化人類学者というだけあって世界観が緻密に作り込まれていて、こんな物語が昔本当にあったんじゃないかと錯覚してしまうほどでした。
現代日本とは全く違う世界だから理解するのに時間がかかるだろうと思っていたのですが、キャラクターが各々の立場に悩み苦しんでいる様子が人間らしく世界共通なので、
身分は違えど自分の過去と重なるところなどもありキャラクターごとの想いがすんなりと自分の中に入ってきて非常に読みやすかったです。
どのキャラクターもとても魅力的なのですが、個人的には主人公のバルサがとてもカッコよく映ります。
精霊をその身に宿すことになってしまったチャグム皇子を妃から託されるのですが、流れ弾のような状況なのにチャグム皇子を守り抜くと心に誓った誠実さと優しさにまず心が温かくなります。
そして、チャグム皇子は世間のことを何も知らない皇子さまです。
旅の中で繰り広げられるチャグム皇子の様々な疑問にも皇子の心境をくみ取り人生経験を駆使して知的に真摯に受け答えする様子とどこにでもいそうな中年っぽい喋り方のギャップと相まって人間味あふれるキャラクターに心が惹かれていきました。
バルサ以外にも個性的なキャラクターが勢ぞろいしていますので、是非手に取ってあなただけのお気に入りのキャラクターを見つけてみてください。