著者初期のサスペンス小説になります。
物語のテーマに、犯人像やトリックがしっかり噛み合っており、巻き込まれ型サスペンスとしての疾走感が感じられ面白かったです。
文章の読みやすさやスピード感もあり、物語は真弓の気持ちに寄り添いながら最後まで一気に突き進みます。
事件に巻き込まれた主人公が、司法の手から逃れながら真相を探るサスペンス小説ですが、手掛かりがしっかり作中に記載されているため、読者にも推理可能なもので納得感があります。
執筆が1960年であるため、文中の言葉や価値観に昭和を強く感じる部分はありますが、ある意味では現代でも大きく変わっていないのではないかと思う部分もありました。
作中、何度も男女関係や結婚や子どもと大人の違いについて真弓が考えをめぐらす場面があります。
そして真弓が辿り着く「結婚って何さ」という呟きの哀しさに、今回の事件の全てが詰まっていました。
「有栖川有栖選 必読!Selection」では、有栖川有栖による作品情報や解説が収録されています。これが作品理解に良かったので、著者の本を読む際には次回もこのセレクションの中から選びたいと思いました。