米澤さんの作品が好きなので手に取ってみた1冊です。
主人公の越野ハルカは中学1年生。
父が失踪したため、母と弟と共に坂牧市という地方都市に引っ越してきたところから物語が始まります。
米澤さん作という先入観があるせいなのか…どうも最初から不穏な空気を感じていると、
弟の発言をなぞるような事件が起こり、さらに不安な気持ちにさせられます。
そしてハルカは、社会の先生から「未来視の伝承」、友達のリンカから「高速道路誘致運動」の話を聞くことに。
そうした地方都市の暗部も見え隠れするところが、怖いながらも面白いです。
また、その閉鎖性が子どもの目から語られるというのもポイント。
ハルカは子どもというには大人び過ぎている気もしますが……
人間関係に気を遣い、自分の居場所をきちんと確保しようとするハルカはしっかり者で好感を持てますが、
逆に子どもらしくいられない環境に育ったのだろうかと思うと、すこし切なさも感じます。
どうして弟は未来が見えるかのような発言を繰り返すのか?
その理由を理解して安心しようとするハルカの奮闘を応援したくなります。
ミステリー要素よりも、得体の知れない空気感のほうが楽しめる作品かもしれません。
青春と片付けるには若干重たい部分もあるので、そういうものが苦手な方はご注意ください。