個人の自己決定とは。そして、良心とは。
私たちはどこまで自分自身で決定を下していると言えるのでしょうか。
そして、人間の良心というものには、どの程度の力があるのでしょうか。
時代や周囲を取り巻く状況によって、人間の心は簡単に左右されていくものなのかもしれません。
では、その心を支えてくれる絶対的なものはないのでしょうか。
そんなことを深く考えさせられる作品です。
この作品は、第二次世界大戦末期、日本の大学病院で起きた 、捕虜となったアメリカ兵への“生体解剖”という、実際にあった事件を下敷きに、医学者たちの倫理崩壊と人間の脆さを描いたものです。 
登場する医師や看護師はみな、極端な悪人ではなく、ごく普通の人々 、しかし戦争という非常事態の中で、集団の圧力や“成功”“評価”という欲望に流され、取り返しのつかない道を選んでしまう。その「普通さ」が、むしろ読後の胸のざわつきを増幅させます。 
読み終えたあとは、「もし自分があの場にいたら…」「自分ならば断れただろうか…」と、自分自身の良心や責任について深く考えざるを得なくなりました。社会や時代に流されやすい人間の弱さ、それがどれほど怖いかを突きつけられた作品です。














