父の歯科医院を継いだ桃と、その親友ヒビキ。二人を取り巻く多くの人々の視点が入れ替わり立ち替わり現れ、それぞれの「今」が淡々と、けれど濃密に描かれています。
登場する人々は皆、自分の意志で自由に生きているようでいて、どこかにままならない「不自由さ」や孤独を抱えています。大きな事件が起きるわけではありませんが、読み進めるうちに、彼らの生活の温度や気配がふわっと肌に伝わってきて、いつの間にかその世界に引き込まれてしまいました。
特に興味深かったのは、母娘の関係性です。
由紀とヒビキは全くタイプが違う女性なのに、それぞれの娘との間に流れる空気感や距離感がそっくりなのが、とても不思議でリアルでした。
ヒビキの娘の未来が、いつか陽のようになりそうな予感がします。
母親としての由紀は、決して「悪人」ではありません。けれど、娘である陽や桃にとっては、決して「いい母」ではなかった……。その埋めようのないズレが、切なく胸に響きます。













