「阪急電車」「図書館戦争シリーズ」で有名な有川浩さんが手掛けている純度高めな恋愛小説でした。
有川浩さんらしいテンポのいい展開で世界観にぐっと引き込まれてしまいます。「お嬢さん、よかったら俺を拾ってくれませんか? 咬みません。躾のできたよい子です」
捨て犬のような彼に主人公が出会うところから物語が始まっていきます。
普段では使うことのないワードに面喰い、これから何が始まるんだろうと予測不能な展開に心をつかまれます。
有川浩さんらしいコミカルな書き出しに目がひきつけられ、期待が高まりあっという間に読んでしまいました。
代り映えしない主人公の毎日が彼の訪れによって少しずつ変わっていく様子に心が温まります。
一緒にいるにつれ彼がどんな人間なのか分かりたいと思う主人公ですが、彼はあまり知られたくないようです。
でもその適度な距離感が心地いいんです。
秘密を抱えて影がある部分もあるのに、いつもは気配りができて優しくて愛嬌たっぷりというギャップのある彼に、年甲斐もなく終始可愛いなと思ってしまいました。
また「植物図鑑」と名前にあるように山菜の知識や料理がたくさん出てきます。
山菜の知識がない私でも、山菜の魅力に惹きつけられ読み終わったころには山菜狩りに行ってみたいという思いに駆られました。
それくらい山菜料理に対する情熱が文書にこもっており、読んでいて山菜料理を食べたいと思うほど鮮明にイメージすることができました。
また様々な山菜の美味しい食べ方などもたくさん紹介されています。
私は山菜というと天ぷらというイメージしかなかったのですが、この本を読んでいて、山菜狩りに行って、いろんな料理の仕方で食べてみたいと思いました。
お金がなくても時間があれば身近な場所から思わぬ発見ができると再確認できる本でした。
この本を人生を楽しむための参考書の一つにしたいと思っています。