『君が電話をかけていた場所』の下巻です。続きが気になり、手に取りました。
表紙は上巻とは打って変わって、主人公の心の闇を描いているような暗めの雰囲気。
上巻のストーリーは、電話越しに女性が主人公に賭けを持ち込むシーンからはじまります。
それは、主人公の痣を消す代わりに、初恋の相手、初鹿野と両想いになる、というもの。
賭けの通り、主人公から痣はなくなりますが、なぜか彼女の顔に痣が……
そのことで事態は複雑に絡み合います。
心を閉ざし、以前の屈託のない彼女とは別人となってしまった初鹿野。
そんな彼女に主人公は戸惑います。
痣があることで変わりゆく人の心を端的に表現していて、人が見た目で与える印象の大きさを実感しました。
そして、それは周りだけでなく自分をも侵食していきます。
人のことだとさして気にならないことが、いざ自分に降りかかると、途端に悲劇に変化するのはどうしてなのでしょう。
追い打ちをかけるように、想いが叶わなかった場合、自分の命の灯が消えることを知る主人公。
鬼気迫る展開にドキドキが止まりません。
また、上巻では主人公に思いを寄せる女子も登場し、彼に想いをぶつけています。
それにも関わらず、初鹿野のことだけを想い続けている主人公。
ありのままの自分を受け入れてくれた人が、たとえどんなに変わろうと、
自分にとってはかけがえのない人だという主人公のゆるぎない気持ちに心が揺さぶられました。
一途な彼の想いは果たして報われるのか。
それとも、想いは一方通行のまま、彼は姿を隠してしまうのか。
凝縮された青春を味わうことのできる作品を、ぜひ一度ご覧ください。