ジャスパー・デントシリーズの前日憚となる短編集。
特にネタバレはないのでシリーズの箸休めに読んでもいいかもしれないが、より余韻を味わいたいなら完結後がおすすめ。
ジャスパー・ハウイー・コニ―・タナ―を主人公にした話が収録されてるが、中編のタナ―を除いてはページ数の短い短編(ジャズは掌編といっても差し支えない)なのでさらっと読める。
友人と学校生活を送り、家族に囲まれ、平凡な日常を過ごしてるジャズたちの姿になんだか安心する。
そしてハウイーとコニ―がすごくいい子。
特にコニ―だが、人種の違いから来る劣等感(ほどいかない負い目)が、短いフレーズで的確に表現されているのに舌を巻く。
「だれも私の目を羨ましがらない。
だれも私の髪を羨ましがらない。」
長々と分量を費やさなくても、思春期のコニ―の寂しさを詰め込んだ、この二行にハッとさせられた。
ジャスパーが殺人鬼の息子だと知っても、彼を思い続ける芯の強さと聡明さには改めて惚れ直した。
ハウイーのハロウィンの話は終始スラップスティックなノリで、初体験にかける彼の試行錯誤が書かれているが、ラストシーンでは彼の抱えた運命の過酷さに感じ入る。
ジャズがハウイーの明るさに救われているのは真実だが、ハウイーの方も自分の病を知りながら特別扱いしないジャズの存在に救われ続けており、二人は対等な親友なのだなと痛感する。
最後はタナ―が主人公で、ロボズ・ノッドの保安官選挙と殺人事件の捜査が絡めて語られる。
妻に先立たれたタナ―の寂寥とした心情が、平易だが非情に巧みな比喩やエピソードに象徴されて印象深い(取り違えが伏線になってるのも上手い)
本編でもジャズの理解者にして助言者な頼れる大人として好印象を持ったが、この短編を読めば彼をもっと好きにならずにいられなくなる。
娑婆を闊歩していた頃のビリーの人となりも語られるが、不満を挙げるなら、ビリーを追い詰めたのがタナ―の綿密な推理や周到な捜査によるものでなく、ビリー自身の落ち度な点。
自己顕示欲に負けたビリーが勝手にボロを出して自壊した感じなので、もっとバリバリ捜査して、真相に近付いていくタナ―が見たかった。











