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太宰治『人間失格』は、主人公・大庭葉蔵の手記を通じて、人間社会への適応の苦しみと自己喪失を描いた作品である。幼少期から「道化」を演じて他者と距離を取り、やがて酒・薬・女性関係に溺れていく葉蔵の姿は、太宰自身の人生と重なる。
印象的なのは、「恥の多い生涯を送ってきました」という冒頭の一文。葉蔵の告白は、読者の心に深く突き刺さり、「人間とは何か」「生きるとは何か」を問いかけてくる。
文庫版(新潮文庫)は手に取りやすく、解説も充実している。読後には、言葉にできない余韻と、自分自身の“こころ”と向き合う静かな時間が残る。太宰文学の核心に触れる一冊である
















