夜の列車という閉ざされた空間を舞台に、人間の孤独や過去の傷が静かに浮かび上がるミステリー作品です。登場人物たちの秘密や葛藤が巧みに絡み合い、緊張感と哀愁が同居した物語が展開されます。夜の静けさが物語の雰囲気を一層深め、読み進めるほどに引き込まれる魅力的な一冊でした。
『夜行』は、『夜は短し歩けよ乙女』や『四畳半神話大系』の作者として有名な森見登美彦さんの作品です。
ですが、『夜行』の雰囲気は先に挙げた2作品とは全く異なります。
舞台は森見作品におなじみの京都。
同じ英会話スクールに通っていた6人の仲間で鞍馬の火祭を見物に行った時に、
長谷川さんという1人の女性が姿を消してしまいました。
それから10年後。
再び鞍馬の火祭見物のために集まった5人の仲間が、旅先での不思議な体験を語ることになるのです…。
1人が語るごとに第一夜、第二夜、と続いていく短編形式になります。
この構成からして怪談らしさが感じられますよね。
内容は、とにかく不思議で不気味です。
確かに恐ろしい出来事が起きているのですが、それがなんなのかはっきりと掴めない。
そして、基本的に最後まで描かれないのです。
結局はどういうことだったのか、明確な答えを得られないまま話が進んでいくという座りの悪さがまた不気味。
ただ最終夜では解き明かされる部分もあり、それを踏まえてまた最初から考察するというのも面白いかもしれません。
ホラーでもありファンタジーでもある不思議な森見ダークワールド。
『夜行』というタイトルに合わせて、夜の読書タイムに手に取ってみてはいかがでしょう。
貴志祐介の『夜行』は、都市伝説や人間の恐怖心を巧みに織り交ぜたホラー小説で、夜行バスという閉ざされた空間が緊張感を高めています。主人公たちが遭遇する不可解な出来事や恐怖の正体が少しずつ明らかになる展開は、読者をページの先へと引き込みます。心理描写や人間関係も丁寧で、単なる恐怖体験にとどまらず、人間の本性や弱さについても考えさせられる作品です。ラストまで息をのむ、一気読み必至の一冊です。













