夜行
怪談×青春×ファンタジー、かつてない物語
「夜はどこにでも通じているの。世界はつねに夜なのよ」
私たち六人は、京都で学生時代を過ごした仲間だった。十年前、鞍馬の火祭りを訪れた私たちの前から、長谷川さんは突然姿を消した。十年ぶりに鞍馬に集まったのは、おそらく皆、もう一度彼女に会いたかったからだ。夜が更けるなか、それぞれが旅先で出会った不思議な体験を語り出す。私たちは全員、岸田道生という画家が描いた「夜行」という絵と出会っていた。
怪談×青春×ファンタジー、かつてない物語。
春風の花を散らすと見る夢は
さめても胸の騒ぐなりけり
--西行法師
【編集担当からのおすすめ情報】
第156回直木賞候補作にして2017年本屋大賞ノミネート作品。
「ダ・ヴィンチ」プラチナ本オブ・ザ・イヤー2017 第1位。
第7回広島本大賞受賞。
数々の栄冠に輝いたベストセラー、ついに文庫化!
夜行 の書評(感想)
『夜行』は、『夜は短し歩けよ乙女』や『四畳半神話大系』の作者として有名な森見登美彦さんの作品です。
ですが、『夜行』の雰囲気は先に挙げた2作品とは全く異なります。
舞台は森見作品におなじみの京都。
同じ英会話スクールに通っていた6人の仲間で鞍馬の火祭を見物に行った時に、
長谷川さんという1人の女性が姿を消してしまいました。
それから10年後。
再び鞍馬の火祭見物のために集まった5人の仲間が、旅先での不思議な体験を語ることになるのです…。
1人が語るごとに第一夜、第二夜、と続いていく短編形式になります。
この構成からして怪談らしさが感じられますよね。
内容は、とにかく不思議で不気味です。
確かに恐ろしい出来事が起きているのですが、それがなんなのかはっきりと掴めない。
そして、基本的に最後まで描かれないのです。
結局はどういうことだったのか、明確な答えを得られないまま話が進んでいくという座りの悪さがまた不気味。
ただ最終夜では解き明かされる部分もあり、それを踏まえてまた最初から考察するというのも面白いかもしれません。
ホラーでもありファンタジーでもある不思議な森見ダークワールド。
『夜行』というタイトルに合わせて、夜の読書タイムに手に取ってみてはいかがでしょう。