澄み渡った青空と人物に落ちる影が対照的で、思わず手に取っていました。
こちらは、三秋縋さんの作品。
読む側の五感を刺激する比喩表現を、巧みに操る文章がとても素敵です。
主人公は過去を回想し、命の価値について考えを巡らせます。
どうやら自分の寿命と引き換えにお金を手に入れようとしているようです。
しかし、査定された金額は1年につき、たったの1万円。
「自分は他人より一段と優れているから、それ相応の金額になるだろう」と思っていただけに、彼は事態を呑み込めません。
それに、命という計り知れないものを軽んじている金額……
私は彼に同情を抱きながら、まるで自分のことのように怒りが込み上げました。
絶望した彼ですが、もともと人生に嫌気が差していたために、なんと寿命の大半を清算してしまいます。
その後、せめて残された時間で幸せを掴もうとするも、なにをやっても上手くいかず。
彼が他人に危害を加えないかと見張るのは、「監視員」のミヤギという女性。
そして、寿命が二ヶ月を切ったころ、彼はようやく幸せへの近道に気づきます。
果たして彼は、幸せな瞬間(とき)を過ごすことができるのか?
たとえ人生の終わりに近づいたとしても、人は悔いなく生きることができる、と思わせてくれるような作品です。
ぜひ、一度ご覧ください。