物語は、兄が強盗殺人で服役し、弟の武島直貴 が「犯罪者の弟」というレッテルを背負って社会と向き合う日々を描いています。読んでいると、兄の罪がただ「本人だけの過ち」では済まされず、弟や家族の人生までも変えてしまう、その理不尽さ、悲しさに胸が締め付けられました。 
また、直貴の葛藤や苦悩、社会からの差別や偏見、そして「罪」と「償い」「家族の絆」に対する問いかけがとてもリアルで、読後もずっと考えさせられます。 
たしかに、事件そのものの謎を解くようなミステリー要素はほとんどなく、「人間ドラマ」「社会派小説」としての重みが強い作品ですが、それだけに“罪の連鎖”“社会の目”についてのメッセージがクリアで、心に刻まれました。
東野圭吾の『手紙』は、兄の犯罪によって人生を翻弄される弟・直貴の苦悩と葛藤を描いた感動作です。罪と向き合う家族の絆や社会の偏見、許されざる現実の中での希望や愛情が丁寧に描かれ、胸に迫ります。人間の弱さや正義、赦しの意味を考えさせられる深い物語で、感情移入しやすく、読後には強い余韻と共に人とのつながりや生き方の大切さを改めて考えさせられる小説です。


















