最初は宙の成長物語だと思って読み進めていましたが、これは、母親である花野の成長物語でもあったのだと感じました。
物語の最初、花野はとんでもない母親だと思っていましたが、読み進めるうちに「悪い母ではなかったんだな」と印象が変わりました。決して「いい母」というわけではないけれど、徐々に信頼関係が生まれ、二人ならではの関係性が築かれていく様子がとても良かったです。
作中のやっちゃんの死には驚きすぎて、しばらく物語が頭に入ってこないほどでしたが、二人の間にやっちゃんの思いが受け継がれ、恨みつらみを抱える展開にならなかったことに、とても感動しました。
花野と風海の関係も変わり、ホッとしました。宙にとって大切な人たちが仲良くいてくれることは、何より嬉しいことです。複雑な家庭環境であっても、自分は確かに愛されていたことに気づく宙の姿が印象的でした。愛の形を考えさせられる一冊です。














