家族の複雑な絆や世代を超えた思いのつながりが丁寧に描かれていて、心に深く残りました。登場人物それぞれの視点から語られることで、人生の重みや愛情の形を多面的に感じられました。読むたびに新たな発見がある、感動的な作品でした。
この物語の主人公は優子。
苗字が4回変わった女の子です。
このように紹介されたら
「4回?
大人の都合に振り回された子供、
可哀想な子が主人公なの?」と
思う人が多いのではないでしょうか。
この小説の女の子は
血は繋がっていなくても出逢った家族に愛情を
いっぱい注がれていることが随所に垣間見えます。
血が繋がっていないからこそ、
相手を気遣える部分もあり、素敵な関係になれることも
あるのかもしれないと感じました。
高校生の優子は血のつながらない父親と二人暮らし。幼くして母を亡くし、父親が再婚。その父親が海外勤務になって以降、血のつながらない親にリレーのように引き取られた結果だ。
どちらが引き取るかで揉めることもなく、血のつながらない優子を再婚相手が引き取って親でいたいと思う気持ちと子どもの幸せを願う気持ちで渡されるバトン。
優子の結婚を機に明かされるバトンパスの背景と、登場人物の皆のピュアな考え方に温かい気持ちになるストーリー。
主人公の森宮優子は、血のつながらない親たちに育てられてきた。実の母は早くに亡くなり、父は再婚と離婚を繰り返し、そのたびに“親”が変わっていく。けれど、優子は不思議と不幸ではなかった。むしろ、彼女の周囲には、どの親も彼女を大切に思い、精一杯の愛情を注いでいた。
読んでいて、私は「家族は血縁だけではない」ということを、改めて実感した。森宮さんのように、料理で優子を支え、静かに見守る存在。梨花さんのように自由奔放でも、優子の未来を信じて送り出す存在。それぞれの親が、優子に“バトン”を渡すように、愛情と価値観を受け継いでいく姿に、私は深い感動を覚えた。
特に印象的だったのは、優子が自分の進路を決める場面だ。彼女は誰かに決められるのではなく、自分の意志で未来を選ぶ。その姿は、これまで受け取ってきた“バトン”をしっかりと握りしめ、自分の足で走り出す姿に重なって見えた。
この作品は、家族のかたちが多様化する現代において、「つながりの本質は何か」を静かに問いかけてくる。形式や血縁ではなく、誰かを思い、支え合う気持ちこそが“家族”なのだと、私は感じた。
『そして、バトンは渡された』は、優しさと温もりに満ちた物語であり、読後に心がじんわりと温かくなる一冊だった。私もまた、誰かに“バトン”を渡せるような生き方をしていきたいと思う。
瀬尾まいこの『そして、バトンは渡された』は、複雑な家族関係の中で育つ少女・優子の成長と家族の絆を描いた感動作です。母親と父親の再婚を経て、さまざまな家族との関わりを通じて優子が自分の居場所や家族の意味を見つけていく様子が丁寧に描かれています。ユーモアと温かさが絶妙に混ざり、読後には家族の大切さや愛の形について深く考えさせられる、心に残る小説です。















