ありがとう
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問題を起こして離島に飛ばされた内科医の美和。彼女のもとに、父の医院を継いだ鈴音から一本の電話がかかってきます。癌が転移していて余命が短いから、病院を任せたいと請われ、美和は島を離れることに。
不穏な始まりに、一体何が起こるのだろうとドキドキしながら読み進めました。しかし、物語のラストは予想を良い意味で裏切るもので、読後には温かい気持ちになりました。
プライドを捨てて素直になれた者だけが幸せを掴めるのでしょう。「おでん」はきっと戻ってくるはずだと信じていました。ちゃんと別れを告げに行ったのだと思いながらも、「ちょっと無理かな」と感じていましたが、最後の展開に心からホッとしました。
美和は一見、冷酷なように見えますが、実は誰よりも熱い心を持っている人なのではないかと感じました。
それぞれの不器用な愛の行方に胸にじんわりと染み渡る一冊です。