最近あまり物語で感動することがなくなってしまい実用書ばっかり読んでいたけれど、それにも疲れが出ていて、気分転換にと思って東野の先生を小説を手に取りました。
そしたらさすが東野先生。先生のスーッと違和感なく読み進められる文章は超絶好きだと再確認しました。ストーリーはナミヤ雑貨店を超えてきます。
私って小説大好きだったなぁって思い出して、もはやセラピーになったレベル。
これからもたまには小説読んでいろいろ雑念を浄化します。笑
願いが叶うと言われる不思議なクスノキ。ファンタジー・スピリチュアル系の物語。東野圭吾さん作品で言うと『時生』のようなタイプの本。とても読みやすくて、難しい事件や複雑な伏線などはないので分かりやすい。
とても面白くてさらっと1日で読めました。ラストは泣けます。
特に印象的だったのは、主人公の直井玲斗が、自らを「誰にも必要とされない」と思っていたところから、クスノキを通じて人々の想いや願いに寄り添い、少しずつ変わっていく姿。その変化が、誰しもの心にある疎外感や孤独、罪悪感を穏やかに癒すようで、読了後は胸にじんわりとした優しさが残りました。 
本来ミステリで知られる東野さんがあえて“事件を描かない”この作品で、むしろ「人の心」「記憶」「祈り」という非可視のテーマを描き出している点に、新鮮な驚きと、確かな静けさを感じました。生きづらさや後悔を抱える人にこそ、この物語の静かな光は響くのではないかと思います。
一見ファンタジーなのに、読んでいるうちに自分の生活の延長の話のように感じられました。クスノキの静けさと、そこに縋る人間のざわつきの対比がとても印象的です。
クスノキに祈りに来る人たちの「願い」が、決して綺麗ごとだけではなく、後悔や執着や弱さも含んだものとして描かれるのが、東野圭吾さんらしいなと思いました。玲斗がその一つ一つに巻き込まれながら、少しずつ他人にも自分にも真正面から向き合っていく過程が、じんわり胸に残ります。
派手な謎解きはないのに、「人は何を頼りに生きていくのか」「願うことは救いなのか」という問いが、読み終えた後もしばらく心に残りました。読後、クスノキの匂いがまだどこかに漂っているような、静かで温かい余韻のある物語でした。

















