恩田陸さん作、
第2回本屋大賞/第26回吉川英治文学新人賞を受賞した作品です。
全校生徒が夜を徹して80キロの道のりを歩き通す「歩行祭」。
その学校行事を舞台にした青春物語で、主人公である高校3年生の甲田貴子は、高校生活最後の「歩行祭」に際して、3年間誰にも言えず、胸に秘め続けてきた思いを精算するために、密かに賭けをして挑みます。
その賭けの対象である西脇融も、貴子に対して複雑な感情を抱きながら歩き続けます。
青春小説といえば「爽やか」な感じや「甘酸っぱい」感じを想像しますが、この作品では主人公を中心とした複雑な人間関係や、貴子や融の一歩引いた冷静さが、よくある青春小説とは異なる感じを抱かせ、ただただ静かに物語が進んでいきます。
「みんなで夜歩く。ただそれだけのことがどうしてこんなに特別なんだろう」
この言葉の通り、ただ主人公たちが歩いているだけなのに、読んでいくに連れて作品に引き込まれてしまいます。
読み終わった後には、心地よい余韻が残り、なぜだか幸福感に包まれます。
「人生」とは何か、「青春」とは何かを考えたり、思い出したりするきっかけにしてはいかがでしょうか。
青春真っ盛りの中学生や高校生、青春から掛け離れてしまって人生に辟易としている社会人のみなさんにおすすめします。