野球ファンというほどではないが、松井秀喜さんに関しては巨人にいた頃からずっと注目していた。彼がルーキーか、2年目のキャンプの時期だったと思うが、ある雑誌に載ったインタビューがきっかけだった。
そのインタビューで松井さんは、「自分は一野球選手として終わる人間ではないと思っている」というような趣旨の発言をしていた。もっともずいぶん前の話で、正確にはちょっと違うかもしれないのだが、とにかくその時の発言が気になった。まだ何も成し遂げていない新人が、随分と大きなことを言うものだ。それならばどれ程の者か見ていてやろう。そんな感じだ。
数年後、なるほどこれは確かに大物だと思った。野球の成績ももちろんだが、マスコミに取り上げられる人柄、人間性に、である。
本書でもいくつかのエピソードが紹介されているが、どんなに不振のときでも丁寧にマスコミの取材に応じること。ファンを大事にし、めったに球場に足を運べないであろう子ども達のために常に試合に出続けたいと語ったこと。子どもの頃、父親と約束して以来人の悪口を言ったことがないということ。
著者の伊集院氏は雑誌の対談で松井さんと知り合い、その人間性に惹かれて親交を深めてきた。
氏いわく「もっとも美しい日本人」との評価は、ファンでなくとも本書を読めば、それほど大げさとは感じないだろう。
本書はアメリカで出版された書籍の日本語版である。その分日本の野球とそれにまつわる文化について丁寧に書かれており、野球に詳しくない人にも読みやすいのではないか。
松井ファンはもちろん、野球に詳しくない方もぜひ。