【白いセーターは、汚れからは守られたけど、においからは守られなかった】
ほっこりタイトルに騙されてはいけない。今村夏子さんなので「ほっこり」するはずもなく、心がざわざわする短編集だった。「白いセーター」「ルルちゃん」「モグラハウスの扉」表題作「父と私の桜尾通り商店街」が好き。登場人物の人となりを直接的に表現せず、仕草や言動で読み手に想像させる手腕が凄まじい。読み手に違和感を覚えさせる行動や言葉選びのバリエーションが豊富で、物語のトーンがとある行動を境に一変し、得体の知れない世界に誘われる筆致は圧巻の一言。