以上、一度は触れていただきたい4冊をご紹介させていただきましたが、どれもじゃがいもレシピ本とは思えないほど、ストーリー性に富んでおり、登場人物たちの魅力に心を奪われること間違いなしです。じゃがいもの広がり具合、工夫次第でどこまでも料理が広がることの比喩とも取れます。それぞれの作家さんがじゃがいもという、見た目こそ地味かもしれませんが、実は多様な可能性を秘めた食材をどう生かし、どんなレシピに昇華させているのか。それぞれの視点や解釈に触れる楽しみは、もはや本書を手に取る大きな動機になってしまうのではないでしょうか。

また、それぞれの作品が単なる料理の紹介にとどまらず人間ドラマを織り交ぜた形で描かれていることも、読みごたえ十分なポイントです。主人公たちの成長や変化、人間関係の深まりといった部分もじゃがいも料理を通じて描かれており、料理だけでなく、人間ドラマが好きな方にもオススメしたい一冊です。

私自身、初めて本書を手に取ったときは何の気なしに興味本位で読んでみただけなのですが、じゃがいもという食材の奥深さと、それぞれの作品が持つ独自の世界観に引き込まれ、一気に読み通してしまいました。その後、また違った視点でじゃがいも料理を作ってみたくなるという、料理や食材への新たな興奮を得ることができました。

これを読んだあとは、ふだん何気なく口にしているじゃがいもが、とても特別なものに感じられるはずです。是非とも手に取り、新しい視点でじゃがいも料理と向き合ってみてはいかがでしょうか。あなたのキッチンが、単なる料理の場所から物語が生まれる場所へと変わるかもしれませんよ。