ありがとう
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舞台となる六甲山をわたしも縦走したことがある。朝日を見るまえに塩屋をスタートして、約50㎞先の宝塚にゴールしたのは12時間後だった。それはそれできついが、この小説は決められた縦走路ではない未開の山中を山岳地図の等高線などの情報だけで道を切り拓いていくバリ山行を描いている。そのスリリングな描写は必読で是非味わってほしい。並行して主人公が勤める中小企業の大変さも描かれていて、その現実と乖離したバリ山行とは何なのかを考えさせられる。バリ山行の大先輩の妻鹿(めが)さんが言うように、自分がやれることをやるしかないということ、自分の信念を持って生きろ、ということなのかも知れない。