舞台となる六甲山をわたしも縦走したことがある。朝日を見るまえに塩屋をスタートして、約50㎞先の宝塚にゴールしたのは12時間後だった。それはそれできついが、この小説は決められた縦走路ではない未開の山中を山岳地図の等高線などの情報だけで道を切り拓いていくバリ山行を描いている。そのスリリングな描写は必読で是非味わってほしい。並行して主人公が勤める中小企業の大変さも描かれていて、その現実と乖離したバリ山行とは何なのかを考えさせられる。バリ山行の大先輩の妻鹿(めが)さんが言うように、自分がやれることをやるしかないということ、自分の信念を持って生きろ、ということなのかも知れない。
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発売日: 2024年07月29日
発行元: 講談社
第171回芥川賞受賞作。古くなった建外装修繕を専門とする新田テック建装に、内装リフォーム会社から転職して2年。会社の付き合いを極力避けてきた波多は同僚に誘われるまま六甲山登山に参加する。その後、社内登山グループは正式な登山部となり、波多も親睦を図る目的の気楽な活動をするようになっていたが、職人気質で職場で変人扱いされ孤立しているベテラン社員妻鹿があえて登山路を外れる難易度の高い登山「バリ山行」をしていることを知ると……。
「山は遊びですよ。遊びで死んだら意味ないじゃないですか! 本物の危機は山じゃないですよ。街ですよ! 生活ですよ。妻鹿さんはそれから逃げてるだけじゃないですか!」(本文より抜粋)
会社も人生も山あり谷あり、バリの達人と危険な道行き。圧倒的生の実感を求め、山と人生を重ねて瞑走する純文山岳小説。
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