男女の認識の差、そして「断れなかったこと」への心理。この物語で描かれている葛藤は、実は多くの人が身に覚えのあることではないでしょうか。
たとえ講師と受講生のような上下関係がなく、対等な恋人同士であっても、同じようなことは起こり得ます。「嫌われたくないから」と誘われるままについていき、その先の展開を予感しながらも、いざとなるとやっぱり嫌で抵抗してみる。けれど結局は押し切られて諦めてしまう……。
そんな経験を、「女のほうが悪い」「自業自得だ」と切り捨てられてしまう世の中の視線が、どれほど残酷であるかを痛感させられます。
特に心に刺さったのは、この一文でした。
「月島先生がそんなことをするはずはない、と思っていたというより、自分の身にそんなことが起きるはずはない、と信じていたような気がします」
この言葉に込められた「油断」や「信じたかった気持ち」が、あまりにリアルで苦しくなりました。被害にあった自分を責めてしまう心理、そして周囲の無理解。
「NO」と言えなかったのではなく、「NO」を尊重してもらえなかった側の苦しみに寄り添い、何が本当に正しいのかを深く考えさせられる一冊でした。

















