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実家のスナックで焼身自殺を遂げた節子。彼女の身に一体何があったのか——。物語は、夫であるラブホテル経営者・幸田喜一郎の交通事故をきっかけに、隠された人間関係の糸が次々と解き明かされていきます。
死にゆく夫から託された、前妻の子・梢の捜索。それを依頼されたのは、元上司であり愛人でもある澤木でした。さらに、幸田は母の愛人でもあったという設定に、家系や過去に縛られたドロドロとした因縁を感じずにはいられません。
物語のもう一つの軸、短歌会で知り合った倫子から娘のまゆみを押し付けられるエピソードも強烈です。幼い少女の体に残された酷い痣を見つけたとき、この物語がどこへ向かうのか、先が気になってページをめくる手が止まりませんでした。
登場するのは、一筋縄ではいかない「強かな女たち」。
凄惨な出来事が重なり、逃げ場のないような閉塞感の中でも、彼女たちがどうにかして今の場所から「逃げ切ってほしい」と願わずにはいられませんでした。
人間の業が剥き出しになるような、息つく暇もないサスペンスフルな一冊です。














