これは犯罪と復讐と裏切りの物語である。
この小説には何人もの印象的な人物が存在するが、中でも強烈な負のパワーを放ち読者を惹きつけてやまないのがストーリー母子。
情緒不安定なスピード中毒者、口を開けばスラングが飛び出す札つきのビッチ。
そんな母を忌み嫌いつつ呪縛されている娘のシェイ、互いの喉首に食らいつくように反発しあう母と娘が演じる剥き出しの魂のぶつかりあいが、あるいは本筋以上に手に汗握るもうひとつの命題として全編を貫く。
登場人物はいずれもなにがしかの破綻を抱えており、どこまでも利己的に突っ走っては罪を罪で隠蔽するための薄汚い策略を練り、弾丸をばらまき、人格の高潔さよりは品性の野卑さを露呈する。
破滅へとひた走る彼等の生き様を炙りだすのは比喩を多用したドライヴ感あふれる文体、ときに詩的な、ときに破壊的なリズムを生んできな臭い火薬のスパイスを散りばめる。
そしてこれは社会から排斥された者たち、社会に背を向けた隠者が再起を賭けて戦いに挑む物語でもある。
埋葬された真実を追い求めるヴィクを献身的にサポートするランドシャーク、二人が事件の捜査を経て信頼を築き友情を育んでいく過程、ランドシャークがヴィクに導かれ一歩踏み出すシーンは、エゴの塊のような人間ばかりが入り乱れる本作において敬虔な感動を与えてくれるだろう。

















