「そいつはいつも地味で暗くてうつむいてるやつだった」
「ロックなんてやってるやつなあ きもいに決まってんだろ」
平々凡々な主人公・真神あきらは、高校入学早々の部活レクリエーションで、ロック研究会の先輩が演奏したナンバーガールの透明少女に心奪われる。
ゲインは最大、歌詞は聞き取れず。
その先輩・不二美あきらは偏屈で尊大、ニワカに厳しいぼっちで「99人に無視されて一人に刺さる」ロックを愛し、たかしもその情熱にまきこまれてロックの魅力に目覚めていく……
これはよいボーイミーツボーイ!良質の音楽漫画にして熱い青春もの。
まず表現の仕方がイイ。ナンバーガールの透明少女やフジファブリックの桜の季節、初音ミクのワールズエンドダンスホールなど、メジャーマイナー問わず実在の楽曲が登場人物たちのお気に入りとして、また演奏する曲として登場するのだが、タイトルとバンド名が見開きでバーン!と挿入される演出が非常にカッコイイ。
ロック(というか音楽全般)に疎く、僭越ながらナンバーガールを知らなかったのだが、「これってどんな曲なんだろう?」と思わず気になって調べてしまう。
音楽という本来耳で聴くジャンルを、リリカルな心象風景やダイナミックな比喩も交えて視覚的に表現していて、たかしの言葉を借りるなら「だれもいない場所にいるような でも寂しいだけじゃなく 何かが始まりそうでワクワクする」雰囲気がよく伝わってくる。
そしてキャラがイイ!
根暗できもくてぼっちで偏屈、傲慢で尊大だがロックへの愛は人一倍のあきらと、そんなあきらの演奏に惚れて「100人に刺したい」と主張するたかしのテンポよいコントが面白い。
互いに足りないものを補い合うナイスな先輩後輩コンビ。ハイテンションな音楽語りも楽しめて、引用されてる曲への興味が沸く。
現行の実在バンドだけじゃなく、ニコニコで手軽に聴けるボカロ曲なども取り上げられて、間口が広くとられているのが好感触。
それこそ私のようなロックに詳しくない、音楽への造詣が浅い読者もストレートに感情移入でき、一体化して盛り上がれるような工夫がこらされている。
たかしやあきらの音楽に対する真摯な姿勢や演奏に賭けるパッションが心地よく、好きなものはとことん好きだ、惚れたらとことん惚れぬいてやるスタイルは痛々しくも清々しく応援したくなる。
一巻はまだ導入だが、バンド解散に至るあきらの過去や部員集めなどの伏線が張られて続きがとても気になる。

















